杉本建築アトリエ













Q&A


Q1.家づくりで一番重要なことは何だと考えていますか。

 家を建てる人の満足度が、最大の重要事項と考えています。住宅のあり方は、建築主の価値観・人生観が違うように、一軒一軒が違って然るべきです。そのために設計者には、建築主の望んでいることを探り出す、鋭敏な感受性が求められます。しかし現実には、簡単な事ではありません。

Q2.建築士に設計してもらうのは高くなるのではないですか。
 正式に建築設計事務所に依頼した場合は、国土交通省の建築士事務所の業務報酬基準で想定している設計・監理の業務量になるのが一般的と思います。この場合住宅では、業務報酬は10数%になります。これが高いか安いかは、価値観によって決まる評価と思います。Q3の回答と重複しますが、建築主の満足度は設計事務所に依頼した場合が最も高かった、という調査が出ています。むしろ、しっかりとした設計・監理をしていなかったが為に欠陥住宅となるケースが多いことを考えると、建築に必要な経費と考えるべきでしょう。
 また、CM・分離発注方式の場合は、「設計監理」のページに記載されている通り、大手ハウスメーカーに比較しても、トータルでは安価になります。

Q3.工務店は設計料が要らず安く建てられると言われますが本当ですか。

 大きな間違いです。工務店でもハウスメーカーでも設計料は必要です。サービスなどと言って表の見積書では無料のように装っても、裏の実行予算では設計料は組み込まれています。見えないだけで実際には建築主が負担しています。ただ、工務店の場合は設計・監理にコストをかけることはあまりなく、設計事務所に依頼した場合と比較すれば、設計料はかなり安価で、数分の一というのが実情でしょう。国土交通省の建築士事務所の業務報酬基準で想定している設計とは、相当な質の違いがあります。しかし「OZONE」の建築主の満足度調査で、設計事務所に依頼した場合が最も満足度が高かったという結果からも、設計にコストをかけることが重要と言えます。CM・分離発注方式の場合は、工務店等では一般に少なくとも20%程必要になる諸経費(現場管理費+一般管理費)が不要となりますので、その分設計・監理に十分なコストをかけることができます。それでもなお、工務店よりも遥かに安価に建築できている現実が、CM・分離発注方式にはあります。

Q4.高い建材をどう安くできますか。

 インターネットの発展により、既に流通革命が裏で進展しています。ひと昔前は建築主が直接建材を調達することは難しかったのですが、現在は可能な状況となってきており、実際に建材を施主支給というケースが増えています。CM・分離発注方式の設計者も、なるべく安価に調達できる建材のルートを常に探していると思います。競争入札などによっても、安価な調達先を探す努力が必要となります。

Q5.高い建築の工賃をどう安くできますか。

 実際に家を建てる職人さんたちの所得の現状は、決して高い状況にはありません。職人さんたちが十分に生活が成り立つ賃金が得られなければ、建設業は衰退します。ただ単に日当を安く建ててもらうというのではなく、工法の合理化等の努力や、無駄を省いた施工方法の提案等でコストダウンをしていく必要があります。

Q6.分離発注でも住宅ローンは適用できますか

 勿論適用できます。最近は金融機関も分離発注に慣れて来ているようで、八十二銀行では繋ぎ融資にも快く対応します。またオープンシステムのための業界最低水準金利のフラット35も、三井住友で用意されています。

Q7.耐震性についてはどう思いますか。

 人命・財産を守るために、建築物の耐震性は極めて重要です。構造計算などの裏付けを確認しながら、設計を進める必要があります。しかし最も多い木造2階建てでは、正式な構造計算が義務付けられておらず、簡略な筋交い計算程度を構造計算としているのが現状です。当事務所では、木造2階建てでも正式な構造計算(許容応力度計算)をしています。

Q8.陽当たり・風通し等の悪い土地に建築する際、快適な住まいにするためにどのような工夫ができますか。

 平面計画・断面計画・設備計画で、与条件をカバーする工夫が必要となると思われます。冒頭の回答とも重複しますが、「快適な住まい」をどう考え、何を重視するかによっても、対策は変わってくると思います。ある場合は徹底した人工環境による快適さを求め、ある場合はなるべく少ない自然を採り入れるなどの対応となるでしょう。

Q9.結露・カビ対策はどう考えていますか。

 結露・カビはその建物に住む人の健康を害するのみならず、建物自体の耐久性をも弱くしますので、発生を防がなければなりません。通常目にする壁の結露は表面結露ですが、断熱の不足・室内での大量の水蒸気発生などが原因で、カビの発生に繋がります。したがって隙間の無い断熱施工と、蒸気大量発生の場合は、換気等住む人の管理が必要となります。湿地を除く通常の地域の場合においては、ウールブレス・セルロースファイバー等家屋内部で発生する湿気の量を吸放湿できる断熱材を採用することで、壁体内部の結露とカビの発生は防ぐ事ができます。グラスウール等の吸放湿性の無い断熱材の場合は、北海道で行われているように気密シートの施工と外部通気層工法の併用で、壁体内に湿気が侵入することを防がなくてはなりません。別荘地などで湿地帯にある敷地の場合は、対策を何重にも立てなければなりません。建物床下からの湿気を遮断するために高床工法などの採用、通風・換気がし易い窓の計画、設備による換気・除湿、場合によっては、人体に無害な薬剤によるカビの発生の防止なども対策として考えられます。

Q10.土地が狭く、3階建てで階段が多いといった狭小住宅を建築する際、老後に備えたバリヤフリー対策はどのように考えていますか。

 ホームエレベーターなど、昇降機の設置が必要になると思います。またバリヤは人によって違いますので、障害に応じた対策としなければなりません。一般的には車イスの利用等を考えてなるべく段差の無い床とし、引戸を多用することもユニバーサルデザインと言えるでしょう。

Q11.ランニングコストはどのように抑えられますか。

   また、メンテナンスフリーの家は造れますか。

 次世代断熱基準のレベルまで断熱性能を高め、冷暖房の熱損失を小さくすることが、冷暖房のランニングコストの削減につながります。併せてパッシブソーラーの効果が期待できるよう、建物の受熱面の熱容量を考慮した設計とすると効果的です。併せて地熱を利用したいところですが、これには基礎断熱が必要であり、下手をするとシロアリ被害を招き寄せる家になりますので、難しいところです。現在のところ、基礎断熱をしてシロアリ被害を完全に遮断するのは難しいと判断しています。住宅のエネルギーは上記の冷暖房と給湯・照明で1/3ずつを占めると言われます。給湯についてはエコキュートなどの採用でランニングコストは低減できます。照明に使う電気のランニングコストは太陽光発電等の採用でも低減できます。
 上記はエネルギーのランニングコストですが、建築物自体のメンテナンスコストを抑えるためには、耐久性のある建築材料の採用が必要となります。メンテナンスフリーを目指した新建材の開発の結果が、現状の問題を引き起こしていますので、十分な配慮が必要になります。

Q12.住宅に関する化学物質過敏症についてはどう考えていますか。

   また、100%安全な家は建てられますか。

 化学物質過敏症の発生は、文明の問題と捉えています。地球からの、ガン細胞である人間への反撃なのかもしれません。同様の問題に、環境ホルモンの摂取による若年層の生殖能力の減退が有ります。ともあれアレルギーの問題は他にも花粉症・アトピー等と、文明のあり方を見直さなければならない時点まで来ているように感じます。シックハウスという言葉が出来たように、便利さやメンテナンスフリーを目指しての<建材開発の結果が、人間に牙を向けることになってしまいました。現時点で設計者としてできることは、なるべく自然素材を使うことを薦めることです。地球環境全体の問題として考えなければ、100%安全な家というのは出来ないと思います。

Q13.セキュリティについてはどのような対策ができますか。

 防犯ガラスなど様々な防犯材料・設備の採用ができます。特に別荘などでは、環境に応じて選定すべきでしょう。

Q14.建築した家は何年保ちますか。

 木造であれば、伐採した木の材齢(70〜80年)程度の寿命は持たせたいと思います。燥度・接合部の加工・金物の有効な配置等で、寿命は変わってきます。国の政策も、限りある資源を有効に使うために、長期優良住宅の制度などで今までのように20〜30年で家を建て替えるのではない方向になっています。100年を越えるような寿命を持たせたいと考えています。

Q15.外断熱が良いと言われていますが、優れている点・欠点は何ですか。

   また、それに匹敵する他の良い方法はありますか。

 構造が木造の場合と、鉄筋コンクリート造・鉄骨造の場合とでは区別して考えなければなりません。外断熱工法は元来鉄筋・鉄骨造で有益な断熱工法ですが、熱特性や構造強度の違う木造の場合、外張り断熱工法は一概にベストとは言えません。木造の場合、充填断熱工法と比較して外張り断熱が優れている点は、柱・間柱・筋交い、といった壁体中の構造木材部分の断熱欠損が無いという点です。これはマット系の断熱材(グラスウール・ロックウール・羊毛)を充填する場合の施工の不具合や電気配線・BOX等による隙間の損失と比較しても、有利となります。外張り断熱の欠点としては、構造上せいぜい50ミリ程度の厚さの断熱が限界である点と、外装材を支えるビスに断熱材の経年変化による痩せの発生した場合、過大な応力が生じ外壁が垂れ下がる危険性が指摘されています。匹敵する他の断熱工法としては、「アイシネン」というカナダ生まれの断熱工法があります。こちらは現場発泡樹脂の充填断熱なので、隙間も無く、壁厚分の厚さの断熱が可能になります。詳しくは「アイシネン」のWebサイトをご覧ください。

Q16.その他、これから家を建てたいと考えている人に対して、プロとして何かアドバイスはありますか。

 様々に商業主義的な住宅工法が喧伝され、商業主義的な家づくり情報が氾濫しています。これらの宣伝は針小棒大なものであり、一般的工法と比較してさほど優れたのではありません。賢明な判断をするために、建築士を有効に利用して頂きたいと思います。