杉本建築アトリエ














設計監理費用


設計・監理、工事管理とその費用、現行の一括発注の諸経費


■各種工事を直接専門工事会社にCM・分離発注する方式(以後-A-とします)において建築工事に必要な費用を大きく分けると、@設計・監理費 A工事管理費B 各種建築工事費の三つになります。
@の監理はAの管理とは違い、工事が設計図書の通り行われているか現場と照合する業務であり、その為に監視の監の字になっています。
Aの管理は工程調整や現場の安全・品質管理などの業務です。
@とAを合わせたものがCM業務委託費用になります。

■工事全部を工務店やハウスメーカーなどの元請建設会社に一括発注する場合は、これに建設会社のC一般管理費(社長・役員・営業マン・事務職員の給料、広告宣伝費、住宅展示場建設・維持費用、社屋建設又は賃貸・維持費用・工事保険等各種保険費用・通信費・接待交際費などなど)が加算されます。
Cの一般管理費とAの工事管理費(現場管理費とも言い、現場担当者の給料他の経費)を併せて、元請諸経費と呼んでいます。この元請諸経費は、請負金額の20%以上なければ建設会社は維持が困難となります。
公共工事ではその元請諸経費が見積書に明示されますが、民間工事では明示されていません。各種工事費に含ませ、分からないようにしています。この辺が設計事務所にとっては建設会社に不信感を覚えるところです。工事費を予算に合わせるために仕様変更などをする場合にも、直ぐに変更金額が出ない原因にもなっています。
この元請諸経費に@の設計・監理費とBの各種建築工事費を加えたものが、一括請負の場合の建築費となります。

■元請建設会社に一括発注する場合、設計・監理を分離して設計事務所に依頼する場合(以後-B-とします)と、建設会社に設計を含めて依頼する場合(以後-C-とします。現在住宅建設では最も多い型)に分かれます。
-C-の場合は、内部の建築士が設計をするか、設計を下請設計事務所に出すことになります。
-C-では建築士法で規定されている本来の建築士の監理は、実質的には期待できません。
建設会社内部の建築士が、自分の属する会社に損害を与える程には建築主の側に立つことができないのは仕方のない事ですし、そのような建築士であれば真っ先に人員整理の対象になるでしょう。
建設会社にとってもそのような直接的な利益を生まない人件費を掛ける事自体、受注金額の低下で明日も見えない建設不況下の現在では尚更困難です。
つい最近、名義だけを貸して監理者として建築確認申請書に記載された建築士が実際には何の監理もせず、ひどい建物となって施主から訴えられた裁判で損害賠償を命じられたというニュースが流れました。

■OMソーラーハウスを建てたところ手抜工事の被害に遭われ、現在裁判で闘っておられる医師の方のサイトが、上記の名義貸しや-C-の問題点、設計・監理にコストを掛ける必要性を端的に示していますので、ご参照ください。http://www.geocities.jp/volkshausa/

さて、-A-、-B-、-C-では、どれが一番建築費用が安価になるのでしょうか。

●比較するには建築の仕様や設計・監理・管理の質が同じという条件が必要です。
とは言っても工事管理については、経験豊富な一級建築士が実行する-A-と、学卒間もない人や転職間もない人が担当するかもしれない-C-とが同じ質になる筈がありません。
またベテランが担当しても、一人で10〜20棟も同時に管理するような話も伝わって来る昨今では、工事管理と言うよりも、単なる手配師と言う状態に近いでしょう。
したがって現在の-B-と-C-の工事管理の質にはかなり疑問符が付きます。
また上記のように-C-の場合は第三者の監理は無いので、監理と管理の質には暫く目を瞑ることにしましょう。

●しかし設計の質を問わない訳にはいきません。設計で建築の質の殆どが決まってしまうからです。満足度の高い住宅をつくるためには、十分な打合せと設計が必要です。住宅の模型を作ったり、十分に時間をかけて設計の質を重視することが大切です。
設計事務所の設計業務報酬額の算出については国土交通省告示が出ています。CM・分離発注方式の設計業務報酬部分はその報酬額と同水準ですが、住宅では建築費総額の10数%になります。
これを比較に入れない訳にはいきませんが、-C-では設計にそれほどのコストを掛けられる会社は僅かしかありません。設計にコストを掛ければ掛けるほど、高額な住宅になるか請負金額が同じなら利益が減ることになるからです。住友林業さんのように最初から高額住宅として売るところ以外は、国土交通省の告示と同等の内容の設計をすることは、とても無理なのです。

●建築の仕様については、同じにできますし、実際に工事をするのは-A-も-B-も-C-も同じく、ほとんど地元の専門工事業者の皆さんです。一応各種工事費も同額と仮定し、工事費以外の部分を比較してみましょう。

■-B-は、設計・監理業務の費用の10数%に元請諸経費の20%超を加算すれば30数%となります。

■-C-は、この地域に多い粗末な設計とすれば、20%超の元請諸経費に2〜5%程度の僅かな設計費が加算されるだけなので、20数%となります。
あまり無いケースですが、設計の質を-B-と同等の水準に上げた場合は-B-から監理費分の数%を引いたコストになりますので、30%弱ということになります。前述のように設計事務所が監理をする-B-の場合と違い、公正な第三者の監理は期待できません。

■-A-は、-B-と同等の水準の設計をし、尚且つ設計者が工事管理で現場に足を運ぶ頻度が高いので、週1回程度の監理をする-B-よりも遥かにきめの細かい監理ができます。<BR>
それでもオCM・分離発注方式業務委託費は殆どの場合-C-の場合の元請諸経費以下となります。

100(基本金額)+床面積(u)×2.2(万円)が、当事務所のCM・分離発注方式での業務委託費ですが、結果として建築費総額の20%以下となっています。

CM・分離発注方式業務委託費が、工事費の比率で決められることはありません。それはあくまでも結果としての比率です。委託業務費用が工事費の比率で決められるのであれば、CM・分離発注方式業務受託者がコストマネジメントに労力を注ぎコストダウンを図るほど受託者の業務報酬が下がるという矛盾が生じます。

★★★★以上のように設計に十分なコストをかけ、尚且つ高密度な監理と管理をしても、CM・分離発注方式が最も建築費総額は安価になります。現在主流となっている-C-の場合と比べれば、少なくとも国土交通省の告示と同等の設計費と監理費分(合計10数%)は安価に上がることが、お解りでしょうか。

●この結果は各種工事費を同じと仮定した場合ですが、実際には元請が介在し工事費が不透明な場合には、そうはなりません。建設不況下にあって受注件数が減れば、少ない受注金額から必要な経費を捻出しなければ、建設会社は存続できません。最近あるサッシ屋さんから、メーカーのサッシと室内建具を上代(定価)で施主と契約している工務店の話を聞かされました。アルミサッシや室内建具は今は定価の40%前後が実際の取引価格です。上代400万円なら、それだけでこの工務店の粗利益は240万円程となります。建具だけが上代とは考えにくいので、浴室・キッチン・衛生設備等の住宅設備機器類も多分同様でしょう。考えただけでも空恐ろしい粗利益となります。この施主の方は、余程お金に無頓着なのでしょうか・・・。この話を聞いた大工さんも、「道理で工務店の社長がベンツに乗ってゴルフに行ける訳だ」と・ ・・。

●また逆に大手ハウスメーカーのように仕様を限定して建材や住設機器メーカーから特販価格で仕入れることでコストダウンを図る場合、一般的な工務店よりは工事費自体は安価となるケースも有ります。しかし35〜40%と言われる大手ハウスメーカーの諸経費は、その程度のコストダウンは飲み込んで余り有り、結果として大手ハウスメーカーの住宅は質の割には十分に高額です。
また現在では建材や住設機器も仕入先によっては特販価格と言われるものに近い値段で流通している状況ですので、仕入先の検討やネット情報などによりコストダウンを図れば、大手ハウスメーカーの大量仕入の利点は消え去り、残るのは限定された仕様しか選べない不自由さ、ともなります。

●上のA・B・C以外にも、建設方式の少数派ですが、個人の大工さんに依頼して建てる場合なども有ります。その内容はまちまちですので一概には比較できませんが、いずれにしても質とコストを併せて比較しなければ、比較の意味はありません。
個人の大工さんが元請の場合は実質的には工務店と変わり有りませんし、設計事務所が大工さんの下請となっては、前述の設計の質を重視して満足度を高める事ははまず不可能となるでしょう。
また安易な分離発注方式には工事保険や瑕疵担保の不在、工事管理の不在、建築主の高いリスク負担、などなどの落し穴が待ち受けています。一般の分離発注方式は品確法の対象外ですので、ほとんどは補償制度が不在となります。オープンシステムの場合は補償共済制度を大手損保と立ち上げていますので、工事中や建築後の様々なリスクをカバーし易くなります。

上記の一般的な共通項として言えること以外にも、ケースバイケースで差が有る個別の質を、一般の建築主や経験の乏しい設計者が事前に十分に知って比較することは、現実には困難となります。